インポッシブル・アーキテクチャー | 展覧会 | NMAO:国立国際美術館
建築の歴史を振り返ると、完成に至らなかった素晴らしい構想や、あえて提案に留めた刺激的なアイディアが数多く存在しています。未来に向けて夢想した建築、技術的には可能であったにもかかわらず社会的な条件や制約によって実施できなかった建築、実現よりも既存の制度に対して批評精神を打ち出す点に主眼を置いた提案など、いわゆるアンビルト/未完の建築には、作者の夢や思考がより直接的に表現されているはずです。
この展覧会は、20世紀以降の国外、国内のアンビルトの建築に焦点をあて、それらを仮に「インポッシブル・アーキテクチャー」と称しています。ここでの「インポッシブル」という言葉は、単に建築構想がラディカルで無理難題であるがゆえの「不可能」を意味しません。言うまでもなく、不可能に眼を向ければ、同時に可能性の境界を問うことにも繋がります。建築の不可能性に焦点をあてることによって、逆説的にも建築における極限の可能性や豊饒な潜在力が浮かび上がってくる――それこそが、この展覧会のねらいです。
約40人の建築家・美術家による「インポッシブル・アーキテクチャー」を、図面、模型、関連資料などを通して読み解きながら、未だ見ぬ新たな建築の姿を展望します。(公式HPより)
この展覧会は説明の通り、この世にない、作られることのなかった建築の案が図面や模型、CGで展示されています。なぜ作られなかったかというと、奇想天外すぎて技術的に不可なものや、コスト的に無理だったものもありますが、コンペに負けたというのもありました。
・ウラジーミル・タトリン「第3インターナショナル記念塔」
(写真は公式HPより)
1919年ソヴィエトの芸術家ウラジーミル・タトリンによって構想された、モニュメントでもある鉄製の塔。鉄とガラスを素材とし、高さは400メートルにもなることが予定されていた。塔の形態は14年タトリンがさまざまなフォルムの素材を組み合わせて作成した《コーナー・カウンター・レリーフ》に基づいている。塔の外側は斜めの柱と二つの螺旋構造物から成り、格子状の支柱で支えられていた。内部には立方体、ピラミッド、円柱、半球の形をした四つのフォルムが設置された。立方体は1年に1回転、ピラミッドは月に1回転、円柱は1日に1回転、半球は1時間に1回転し、それぞれ会議室、インターナショナルの組織、出版局や電報局といった情報局として利用されるよう構想された。20年に模型と二つの図面、綱領的スローガンがペトログラード(現サンクトペテルブルク)のスヴォマス(自由国立芸術工房)で、その後連邦会館のホールで展示された。25年には高さ4メートルの模型が作成された。記念塔は模型のみで実現はされなかったが、鉄とガラスという新しい素材の利用、大胆な形態、高度な技術の要請、そして自然のメカニズムとの調和や革命の理念を志向しているという点で、ロシア・アヴァンギャルドの象徴的作品とされている。
(アートスケープより)
塔の中のガラスの建物が、それぞれ回ってて、それがお役所だってことですかね。すごいです。CGで鉄のむきだしの感じとおどろおどろしい音楽がマッチしていてめっちゃ萌えましたね。ロシア・アヴァンギャルドは全く詳しくないですが、なんとなく昔から好きです。
・ザハ・ハディド・アーキテクツ+設計JV「新国立競技場」
こちらは記憶に新しいですよね。こちらは再現ではない実際の模型やCG、分厚い図面、さらには構造性能評価書という、構造的に大丈夫ですよという書類まで準備してあって、本当に造れたんだと思うと残念ですね。今はくまさんの競技場も叩かれて、「ザハの競技場を作っておけば、世界に自慢できる建築が残せたのに!」という意見も多いですが、当時はコストの件でザハ側が叩かれてましたし、仕方なかったんでしょうか。海外になりますが、いつかザハ建築を見に行きたいです!!そしてこれらの計画したコストってどうなってるんだろう?
・磯崎新「東京都庁」
こちらもおなじみ東京都庁ですが、当然コンペが行われたわけで、落ちた人もいるんですよね。磯崎新の案は、低層で実際の今の都庁のような超高層へのアンチ的な意味もあったそうです。仕事をとるためというより、意見の主張のための参加だったんでしょうか。提案のコストとか部下の苦労を考えてしまう(笑)
黒川紀章の「東京計画1961-Helix計画」もまるでSFの世界ですごかったです。DNAの形のようなありえない建造物です。模型でも迫力がありました。さすがにあれは無理だと思う(笑)個人的にメタボリズムは好みじゃないです。
荒川修作+マドリン・ギンズ、アーキグラムの「問われているプロセス/天命反転の橋」もちょうどテレビで「三鷹天命反転住宅」を見たばかりなので、タイムリーでした。
建築の展覧会は、実物を展示するわけにいかないので、図面や模型などになるんですが、そこを逆手にとって、この世になかった建築を展示するという面白い展覧会でした。現実にある都庁などの他の案というのもあって当然なのですが、今まで考えたことがなかったので面白かったです。
建築関係の方はもちろん楽しいと思いますが、素人の私でも楽しめました!
全国4ヵ所を巡回していましたが、大阪が最後のようです。会期は3月15日(日)までです。
インポッシブル・アーキテクチャー | 取材レポート | インターネットミュージアム
ついでにコレクション展も見てきました。
コレクション―現代日本の美意識 | 展覧会 | NMAO:国立国際美術館
ジャンル問わず、現代の作家の展覧会でした。好きになったのは柴田敏雄の地方の建物や建造物の写真です。美しいけど異様な雰囲気がありました。 宮本隆司の廃墟っぽい写真も好きになりました。